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教科書に手を触れると、教科書も消え、同じように筆記用具も消えた。
机に掛けている鞄を持つと、予想通り、鞄も消えた。
僕は静かに立ち上がり、抜き足差し足で音を立てないように教室を出た。
「鈴木くん!」
誰かが呼びかけたような気がしたが、それが速水沙織の声なのか、他の誰かなのか、もう判断できなかった。
廊下に出ると、心臓の鼓動もそうだが、全身が痙攣し、寒くもないのに、震えていた。
家に帰る他はすることもない。
帰途につくと、自然と涙が溢れだしだ。
あとは、家にいる母・・僕の帰りを待っているお母さんしかいない。
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