帰宅

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 その時、 「ちょっと君!」  振り返るとただの中年男だった。  え?・・僕が見えてるの? 「財布落としたよ。これ、君のだろ?」  サラリーマン風の中年男は僕の財布を差し出した。  さっき慌てて尻のポケットに突っ込んだままだったから、抜け落ちたのだ。 「すみません。ありがとうございます!」  僕は深く感謝した。  腰を折りながら、またさっきとは違う涙が溢れていた。  元に戻っている!  僕は透明じゃない!  僕は嬉しくて思わず、財布を拾ってくれた男に抱きつきそうになる。  男は「礼なんていいよ」と言って先を歩いて行った。  
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