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予兆
◆予兆
僕は影が薄い。
うすい、うすい、と言われ続けてきたけれど、まさか、ここまで薄くなってしまうとは・・
いや、薄いどころか、透明に・・
子供の頃、SF小説で読んだことのある透明人間・・それが今の僕だ。
僕の体が完全に透明になったと認識した場所は僕の勉強部屋、僕を透明人間だと気づいたのはある女の子だった。
僕は高校二年、言うほどの進学校ではないが、それなりに、受験勉強をしていた。
そして、それなりの恋も・・
分厚い参考書を開き、問題集を睨み、片方では片思いの女の子ことを考えていた。
時間が経過するに従って、問題集を解く時間よりも、彼女のことを考える時間の方が増えていく。
時々、たまらなくなってクラスの集合写真を取り出し、彼女を見る。
見たからと言ってどうなるものでもない。
ノートの隅に彼女の名前を連ねてみる。書いたからと言ってどうなるものでもない。
そんな邪念を追い払いながら、勉強を続ける。
どちらかというと眠気と戦う苦痛の時間だ。
それにしても、眠い。彼女のことを考えていても眠いものは眠い。
おそらく、夜の10時頃だったと思う。 突然、体がふわりとした感覚がした。
あれ?・・さっきした椅子の高さ調整が悪かったのか?
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