通学路にて

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「よっ、鈴木」と後ろから佐藤が声をかけてくる。  そう、僕は「鈴木」という日本で一番多い苗字を持つ男だ。よって没個性的とも言われたことがある。実際に個性に秀でてはいない。 「受験勉強はかどっているか?」  そんな佐藤もごく僕に負けず劣らずのありふれた名字だ。  佐藤の問いを適当に流しながら僕は昨日のことをまた考えていた。  もし、仮に・・本当に透明人間になったら、  不可能が可能になる。  それが可能になれば、僕はやりたいことがある・・ 「おい、鈴木、聞いているのか?」佐藤の声に我に返った。  佐藤は顎でくいと前方を指した。 「水沢さんだぞ」  目の前をすっすっと風のように歩いているのは、クラス一の秀才と言われる  水沢純子だ。  5月の爽やかな風が吹く中、健康そうな脚で颯爽と歩く彼女は僕の初恋の人だ。
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