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「佐藤くん、おはよう」
僕たちの脇を通り過ぎながら、女の子が挨拶をする。
僕には無しだ。
そう、佐藤はモテる男だ。
僕と違って、運動神経はいいし、当然、成績もいいし、おまけに歌も上手いときてる。
だが、佐藤は僕に朝の挨拶をしない女の子は無視する。頷く程度だ。
「鈴木を軽視する女は挨拶を返す価値なしだ」以前、佐藤が言っていた言葉だ。
そんな理由からかどうかは分からないが佐藤とは長いつき合いだ。
特に趣味が合うとか、目標が同じとかない。時々会って話すのは佐藤くらいだ。
女の子の方はどうして自分たちが無視されるのか、分からない様子で去っていく。
「僕のことは気にしなくていいよ」と僕が佐藤に言うと、
「俺は寄ってくる奴らは嫌いなんだ」と答えた。
確かに僕は佐藤に寄ってはいかなかったが・・
今、去って行った女の子、山野いずみには僕が一年の時、
「鈴木君って、いるのかいないのか、わからないわよね」と言われたことがある。
もちろん、陰口だ。
そんな陰口をご丁寧に教えに来るクラスメイトもいる。
「お前、あんな風に思われてるぞ」と笑い、ご満悦の様子だった。
自分自身は存在感があるとでも言いたかったのだろうか?
そんなことを思い返していると佐藤が「じゃあな、鈴木」と手を振って3階に上がっていった。
佐藤とはクラスが別だ。僕は2階の2年2組の教室に入る。
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