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「沙織は知っているんだろうな・・沙希ちゃんのことを」
「・・だと思いますよ」
そして、速水さんは、小清水さんのことを隠している。
「この後、沙織に会いに行くのだが、君も行くかい?」
「速水部長の家は・・叔父さんの家だから、須磨ですよ。僕の家とは正反対ですけど」
そこまで言って、僕は、はたと思い当たった・・
速水さんは、たとえ叔父さんの家でも、やはり居づらいのではないだろうか。
そこは実の親の家ではない。速水さんが本来住むべき家ではない。夜は別としても昼間は須磨の家にいないのではないだろうか。
だとしたら・・
今の時間・・この車の中には西陽が差している。
同じように西陽差す部室に、今も速水さんは部室で本を読んでいる。
そんな光景が浮かんだ。
いくらなんでもそんな寂しいことはしないだろう、と考えを打ち消しても速水さんの姿が見えてくる。
中学の時、手錠をかけられていた速水さん。
須磨海岸で一人佇んでいた速水沙織。
そして、ついこの間。あのキリヤマと対峙した時の速水さん。
そんな彼女には帰る場所・・心を落ち着かせる場所がない。
速水沙織は言っていた。
「・・私は、もう眠くなることはないのよ」
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