西陽差す高級車の長い時間

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 その時だった。 「灯里さま・・きっと、西陽のせいでしょう」  それは白髪の運転手の石坂さんの声だった。  そして、石坂さんはこう言った。 「私も、鈴木さまのお姿が見えにくいと思っていたのです。けれど、何のことはない。西陽のせいですよ。黄色く眩しい光のせいです。それでぼやけて見えるのですよ」  石坂氏の言う通り、夏の陽射しが僕の体を黄色く染めている。  夏の高い陽射しのせいで、光が青山先輩の位置まで入り込んでいない。  夕陽は僕だけを照らしている。  しかし・・  夕陽で人の姿がぼんやり見えるなんて聞いたことがない。  だが、僕の体・・ゼリー状に見える体に、夕暮れの光が当たり、粒子のようになってキラキラと点滅するように輝いている。石坂さんはこのことを言っているのか?  これまで僕は、この透明化は小清水さんのように僕に少しは好意を抱いている人が半分見えたりする。服が透けて見えたり、ぼんやり見えたりする。  ・・そう考えていた。  だから、青山先輩も僕を嫌いではなく、少しは好感を持ってくれるようになった。だから、ぼんやりと見える。  だが、今日初めて会った石坂さんに、僕の体がぼんやり見えるとはどういうことなんだ?  初めて会った人間が僕に好意を抱くはずもないし、しかも、石坂さんは男だ。  人の何かの感情、その資質がそうさせるのか?
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