西陽差す高級車の長い時間

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 僕は思い切って声を出した。 「青山先輩・・夕陽がきれいですね」  僕の声に青山先輩は窓の方を向いた。 「本当だ・・綺麗だ・・」  タイミングよく夕陽が黄色から、赤色に転じていくところだった。  しばらく青山先輩は窓の外を眺めていた。このまま時が過ぎればいい。その間に元の姿に戻ってくれればいい。  けれど、そんなに長い時間、景色を見たりはしないだろう。  石坂さんはミラー越しにこう言った。 「これまで、私はいろんな風景を見てきました」  そう切り出すと青山先輩が「石坂のキャリアは目を見張るものがあるな」と褒めた。  そう言われた石坂さんは、 「灯里さま・・そんな御恐れ多い」と言って、 「風景もそうですが、私は様々な人間も見てきております」  職業柄、そうだろうな。  しかし、今は・・僕の姿がどう見えるかということの方が問題だ。  そんな僕の不安をよそに石坂さんは、 「けれど・・」と話を続ける。  きっちりと安全確認をしながら石坂さんの言葉は続いた。 「いろんな人間を見てきたのは何もこの職業についてからではありません」  それ以前、ということか。もっと若い頃。 「私にも若い頃がありました・・灯里さまのお年位、そうですね、鈴木さまのような年の頃、思春期の頃・・」  思春期? なぜかその言葉に引っかかる。  いや、それよりも・・僕の姿は二人にどう映っているんだ?  二人に僕の体がどう見えているか、そして、どういう人間に僕の体が見えるのか?
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