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向日葵の花言葉
あの日の謙虚な雨音は今でも鳴り響き未だにその音は鮮明に耳から離れない。 あの日以来、あまり好きじゃなかった雨の日は私に恋から愛の違いを教える特別な日に なった。
『あ~、美味い!今日も普通に幸せ!』と、グラスに入った赤ワインを一気に飲み干し 満面の笑みを浮かべる彼の横顔。この顔を見ることが今の日常であり私の至福の瞬間で ある。こんなに平凡で穏やかな時間があることを初めて彼が教えてくれた。これ程心穏 やかに人の心を満たしてしまうことがあるのなら、これ以外何も望まないから出来る限 りこの横顔を独り占めしたいと願っていた。 そんな彼と知り合ったのは、よくある話なのだが仕事を通じて知り合った。 初めて会った時から『はじめまして。』の感覚はなく、前からこの人を知っていた様な 不思議な感覚に囚われていた。私たちはとにかく性格が正反対なのに、感覚がよく合い 言葉ではうまく説明できないけれど、もう 1人の自分を見ている様に考えていることが 何となくわかってしまい、ほっとけない気持ちになる。お互いはっきりとした言葉を交 わしたわけではないけれど自然と一緒にいる事が当たり前の様になっていた。私達はお 互い仕事が忙しくてなかなか会う時間がなく、せめて夕食だけは一緒に食べるようにと 合間を見つけては同じ時間を過ごす心がけをしていた。彼は今まで会ったことの無い程、楽観的で仕事などの悩み事を相談しても悩んでいるの が、馬鹿馬鹿しくなるくらいいつも前向きな気持ちに変え笑わせてくれた。この人の隣 にずっといられたならこの先どんな試練が起こっても楽しみに待っていられる気がした。 そんな風に自然と思える人と出逢えた奇跡に心の中で何回神様に感謝しただろう。彼と 過ごす時間は、あっという間に過ぎてしまいいつも離れがたくてしょうがなかった。彼 はこんな私の気持ちを知っているのだろうか?そして彼も離れがたい気持ちになってい るのだろうか?いろいろ聞きたいことはあるのだが、あんな出来た彼にこんな野暮な質 問をしたら『何て、器の小さい奴なんだ~。』と思われるんじゃないかと思い、いつも モヤモヤした気持ちはいつも息と一緒に飲み込んでいた。
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