祖母の愛した男

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『ばあちゃんが、認知症になったの。』 大学進学と共に、田舎を出て上京した。 実家を出て、およそ1年半ほど経ったある日の午後。大学からの帰りの道すがら、母からの電話だった。 大した事では無いと思っていた。 ちょっと、わからないことが多い位だと思っていた。 …僕は後から、自分の考えが甘かったのだと思い知ることとなる。 僕は大学の夏季の長期休暇を利用して、実家に帰ることにした。 電車に揺られ、田舎へ向かう道すがら、母からの電話の内容を思い出す。 初めは、物忘れ程度だったらしい。 段々と症状はひどくなり、、、今では、娘である母の事も、孫の僕の事も分からなくなってしまっているようだ。 祖母を思うと沢山の思い出が蘇ってくる。 中でも祖母とのまったりとした時間が一番好きだった。 祖母は、若い頃に死別した祖父のことを、ずっと好いていて、幼い頃の僕に、家の縁側でおやつを食べながら、祖父との思い出話をよく語ってくれていた。 いや、惚気けていたのだろうか? 僕は、祖母との沢山の思い出を、胸に実家に帰省した。 祖母は縁側に座り、ぼーっと外を眺めていた。 僕を見つけ、嬉しそうな顔をする祖母。 なんだ、僕の事覚えてるじゃないか…と思った。ほっと胸をなで下ろしたその時。
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