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「ひっ」
思わず悲鳴を上げながら、後ろに急いでよろめき立ち上がる。向こうからはさぞ情けない姿に見えたに違いない。
しゃがんでいたから半分しか見えてなかった顔の全貌が明らかになった。
白っぽい街灯の光に当てられた顔はジャスミンの花のように青白く、繊細な作り。
色素の薄い瞳の奥を光が透かし、鼻筋を浮かび上がらせ、珊瑚色の唇が光を照り返す。
「だから、何してるのさ」
もう一度繰り返す声に、身体中から汗が滲み出るのが分かる。
恥ずかしくて、こわい。
私は辛うじて視線を背けて再び花に落とし、
「は、花を。花を、見てました」
気の利いた返事など思いつくはずもなく、馬鹿みたいなことを答える。
再びちらりとみやると、最初に出てきた時の表情から微動だにしていなくて、余計に焦る。
あ、つまらない奴だと、また思われた。
待って、と焦って出てくる言葉も、もう逃げてしまいたくなるくらいにあまりに凡庸で、
「あなたは、何を?」
この言葉を発するだけで、手の震えが抑えられなくて、落ち着きなく右手を左手で掴むと、更に手汗が滲んで、気持ち悪い。
訪れた沈黙の間が、またも私に恥辱と後悔を浮かび上がらせる。その人はゆっくりと答えた。
「アイス、食ってた」
「え、アイス?」
あまりに予想だにしなかった答えに、素っ頓狂な声色で聞き返してしまう。
「そ、アイス。この花の茂みの裏で、バニラアイス食うのが、好きなの」
返すべき言葉が全く思いつかなくて、ずっと黙っていると、
「そしたら、茂み越しにじっと見てくる奴がいるじゃん。もう気になって」
「それは大変申し訳ありませんでしたけれども」
初対面の人にそんな不愉快な思いをさせたなら、素直に謝るしかないじゃない。
穴があるなら今すぐ埋まりたいほど恥ずかしくて、もうまともに顔も見れない。
どうして私はいつもこうなんだ。
すると、
「違うだろ」
と、彼は言う。
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