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「では茉莉花いい子にしているように」
「安心してください。部屋から出ませんから!」
「それは良くない。散歩ぐらい出た方がいい」
「……屋敷の鍵を閉めているくせにですか?」
ベルナルトはクスクスと笑った。
「何だ知っていたのか?」
「使用人の方達が話しているのを聞きました! 私をここに閉じ込めておくようにって!」
「君が望むのなら出るといい。私が許可する。ただし敷地内だけだ。敷地内なら自由に出入りして構わない。屋敷の中も外も好きにするといい。だが私の部屋と裏の小屋には入るな」
「何か不味い事でも隠しているんですか?」
「どう思う?」
茉莉花は自信たっぷりに見下してくるベルナルトにイラつき顔をしかめた。
「どうでもいいです。さっさと行ってください。私はここに居ます」
「そうカリカリするな。私の仕事の資料やら何やらがあるだけだ」
「それならそうと言えばいいじゃないですか!」
「何をそんなにカリカリしているんだ? 私が居なくなるのが寂しいのか? 安心しろ、すぐに帰って来る」
「違います! 帰って来なくてもいいですから! さっさと行ってください!」
茉莉花はベルナルトの背中を押し部屋の外に出そうとした。ベルナルトは楽し気に顔を綻ばせ茉莉花に押されるまま部屋の扉を出た。出たところで茉莉花に振り返り、茉莉花の手を取った。
「では茉莉花いい子にしていてくれ。土産を期待しているといい」
チュッと手の甲に唇を寄せたベルナルトに茉莉花は絶句した。背中がぞわぞわと粟立った。急いでベルナルトから手を離すと茉莉花はその手をごしごしと自身の服で拭いた。それを見たベルナルトは顔をしかめていた。
「少しは喜んだらどうだ?」
「はぁ!?」
(何をどう喜べって……!?)
茉莉花は言葉が上手く出せずに口をパクパクとさせていた。ベルナルトはしかめっ面のまま茉莉花に背を向け歩き出した。
「行ってくる」
茉莉花は唖然とベルナルトの背中を見送っていた。
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