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茉莉花は未だに自身に起こった事を理解できていない。
今日もいつもと同じ時間に目を覚まし、いつもと同じように食事を取り、いつもと同じように家事をこなしていた。
ただ一つ違ったのは父親が亡くなったという事だけだった。
数日前のその日、茉莉花の父シルヴァーニはいつものように茉莉花が帰宅すると、安らかな寝顔でベッドに横たわっていた。
その光景は茉莉花に恐怖を与えた。
シルヴァーニは表情こそ安らかだったものの、その周りには彼の物と思われる真っ赤な血が飛び散っていたのだ。ベッドにも吐血したのだろう、シルヴァーニの口の周りも胴体も赤く染まり、項垂れるようにベッドから投げ出された手先からは赤い血が滴っていた。
その異様な光景に茉莉花は目を丸くし、現実として受け入れる事ができなかった。
何かの冗談だと思い茉莉花は父親の体を揺さぶった。だが父親の体は既に冷たく、乾ききっていない血が茉莉花の手を塗らした。
茉莉花は声を出すことも忘れその場に顔を覆って座り込んだのだ。
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