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その後シルヴァーニの死は自殺と断定され、その遺体は丁重に葬られた。遺言らしきものは何も残されていなかった。
茉莉花は唯一の家族を失い呆然としていた。葬儀の段取りにも手が付かず見かねた隣人が茉莉花を支え代わりに手配をしてくれた。
シルヴァーニの安らかな寝顔を見ていた茉莉花は、いつもシルヴァーニに優しくされていた事を思い出し、これでは父親も浮かばれないと自分に言い聞かせた。辛いながらも頑張ろうと奮い立った。
父親とのお別れの日、茉莉花は笑顔で土に埋められる父親を見送った。
数日後の今日、茉莉花はその男ベルナルトと出会った。
墓参りから帰ってくると家の前には真黒な品のいいスーツに、整えられた髪型、何人もの黒服の男性を連れたベルナルトが居た。
茉莉花はベルナルトを、父を偲んで会いに来てくれた人だと思っていた。
ベルナルトは茉莉花を見るなり目を見開いていた。黒服の男達に何かを言うと、ベルナルトは茉莉花に近寄り腕を掴んだ。
「君は誰だ?」
ベルナルトの第一声だった。茉莉花はキョトンとしてシルヴァーニの娘だとそう答えた。ベルナルトは眉間に皺を寄せ、小さく舌打ちすると掴んだ茉莉花の腕を離さずに真黒な高級車へ連れ込もうとした。
茉莉花は訳も分からず慌ててベルナルトの手を振りほどこうとしたが茉莉花の力ではベルナルトを振り払う事など出来ず、あっけなく高級車に乗せられてしまったのだ。
そうして高級車はベルナルトと茉莉花を乗せ走り出した。
「娘が居たなんて聞いていない。……言葉は分かるのか?」
「降ろしてください! どこに行くの!? 貴方、父のお墓参りに来た人じゃないの?!」
茉莉花は混乱し、訳も分からず頭に浮かんだ疑問を喚きながらベルナルトにぶつけた。
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