優しい息子

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明日は、何とか上手くいきますようにと、僕は柄にもなく神社で手を合わせている。 明日は大事な受験の日だから。 理系の大学を受験するのだが、最後はやはり神頼みという訳である。 そして、もう一つ神様にお願いした。 それは、僕の母のことだ。 僕の母は今入院中で、僕の受験に同行できないことを残念がっていた。 少し前に交通事故にあい、まだ時々しか話をすることができないような状態なのだ。 早く良くなって欲しいと、自分の事と一緒にお祈りした。 ここは、何て静かなのか。 周りの空気と、別のにおいがするのは僕の気のせいなのだろうか。 翌日試験はうまくいった。 そして、僕は晴れて希望していた大学に入学することができた。 僕が家を出て、学校の近くにアパートを借りる日も、まだ母は病院から帰る事はできなかった。 母の事は心配であったが、新しい生活に慣れることで毎日が過ぎていった。 ひと月くらいたった頃、電話がかかってきた。 その相手は、僕の母だった。 電話ができるくらい元気のなったようで、まもなく退院できそうだという連絡だった。 「あなたも勉強しっかりやるのですよ」と、最後に付け加える事も忘れなかった。 ほっとした気分だった。 神様ありがとうございました。 僕の母のことも、受験の事も、今度家に帰る時には、またお参りさせていただきます。 本当に良かった。 きっと、これからは良いことが続くと思う。 おもわず僕は、顔に笑みが浮かんでしまう。 明日は、あれから一年になります。 私は、神社で手を合わせて、神様に独り言を言っていました。 受験の前に、あの子がここへ来たいと家を出たのは。 来る途中で、交通事故に巻き込まれてしまい、実際は車にひかれそうな子供をたすけたこと。 そして、息を引き取る際に、少し微笑んで見えたことが、せめてもの私の慰めになっています。 受験することも出来ず、残念だったでしょう。 お母さんは、あなたの代わりにここに来ました。
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