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   「夢」         1章・タヌキとウサギ             「山の道場」へ行く日がやってきた。  孝三朗は車を飛ばして山の道場へ急いでいた。 道場へ行くには山道を登らなければならない。  夜であった。  急に車にトラブルが発生した。エンストである。  「困ったなあ。このポンコツ。仕方がない。車は乗り捨てよう。」  孝三朗は自転車に乗り換えて「山の道場」へ行くことにした。  いつしかタヌキとウサギが後をつけてきた。  「君たちはどこのタヌキとウサギですか?」  ウサギが答えた。  「私達はソロモン王の命令で鰐の数を数えに行くのです。」  「(成程、因幡の白ウサギか。ではタヌキの方は何だ?)」  孝三朗の心を読んだのか、タヌキが答えた。  「私はウサギさんに昔虐められたタヌキです。今はこうして一緒に旅をしております。」  「成程、カチカチ山のタヌキだな。そうか、このタヌキはウサギに『虐められた』と思っているのか。これは太宰治のカチカチ山だな。」  孝三朗は二匹の「お供」を連れて山を登っていった。
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