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「自転車じゃ練習が始まるまでに着けるか心配だな。」
そう思いながら孝三朗は一生懸命ペダルをこいだ。
今度こそ山の道場で師範が待ってくれているはずだ。
「これからは仏教だな。」と言ってまた面白い話を聞かせてくれそうだ。
左手は海岸線で孝三朗が最初に赴任した高校がよく見えた。右側は切り立った崖である。
孝三朗はゆっくりゆっくりとペダルをこいだ。
なぜかウサギもタヌキも姿を消していた。
2章・警官と盲学校
その時である。山の中腹に突然交番が出現した。
中から警官が出てきた。
「何処へ行くのか?」
国家権力の犬は鷹揚に尋ねた。
「学校です。」
「どこの学校だ?」
犬は聞き直した。国家権力の犬は本当に「犬のお巡りさん」に変身していた。舌を出して「ハーハー」言いながら聞き直したのだ。
「大阪府立ポンコツ高校です。」
「あの学校か。ハーハー。あの学校は、ハーハー倒産した。あなたの行く学校は、ハーハー、クレイジー高校だ。」
と犬が言ったので、孝三朗は仕方なく海の見える丘を登り始めた。
学校が見えてきた。クレイジー高校ではない。どこだろうか?
そう思いながら木造校舎の学校へ入った。
数人の盲人の少女が豚を解剖していた。
「盲学校か。」
孝三朗は豚の解剖を指導した。
「あ。そこを無駄にしてはいけないよ。食べられるんだから。」
「先生一体誰?」
「豚の解剖を指導しに来た。合気道の名人だ。」
「分かった。ポンコツ高校の先生ですね。」
豚の内臓を洗い終えた生徒が手を洗っている。
「先生、専門の教科は何?」
女生徒が聞いたので答えた。
「英語と世界史や。」
「それならこの問題分かりますよね。ベートーベンとショパンを弾きますから、どちらがベートーベンの曲か当てて下さい。」
一人の生徒がピアノに向かって「テンペスト」の第三楽章を弾いた。もう一人が「ノクターン」を弾いた。
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