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 頭にきた孝三朗はこの男にいたずら電話をかけた。勿論184を押してからである。しか   も細く長く、イタ電の極意である細く長くで、月に一回くらいの間隔でかけた。しかし、   なぜか彼はそれが孝三朗だったと勘で気づいたようで、孝三朗に土下座して謝れと言って   きた。これは強要罪である。当然イタ電なんかより罪は重い。  孝三朗はしかし「土下座」には慣れていた。駄目教師であった孝三朗は今までに何回も土   下座をしている。孝三朗は思った。  「なんだ。そんな簡単なことか。それはどうもすみませんでした。」  そう言って土下座を決めた。するとその四十男は騒ぎ始めた。  「やっぱりそうやったんやー。おい、お前。わしとタイマンはるか?」  「はあ?」  「『はあ?』なんて言って何ビビってるねん?」  孝三朗は馬鹿馬鹿しくなってきた。こんな子供のような四十男が世の中にいたのか?そう   思った。しかし、なぜか彼が次に発した言葉に孝三朗は驚かざるを得なかった。  「ウナギでも食いに行くか?」     
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