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ささやかな望み
第1章 春
窓の外は細かい雨が降っている。
きょうは4月にも関わらず、薄着ではいられない陽気である。
いつもどおり、通学する小学生や、通勤の人達が足早に通り過ぎてゆく。
傘のパレードは、見ていて面白い。
色とりどりの傘の列が、あっちこっちに動いていく。
せっかくの桜も、この雨で散ってしまうのだろうか。
まさに、花の命は・・・・ということなのか。
皆が、新しいスタートを迎え、意気揚々と学校や職場へ向かっている。
私は多くの人達とは、少し違うのかもしれない。
毎日のように、その光景を見ているだけある。
小さい頃は普通に学校へ通うことができた。
いつ頃からなのか、人の中に入る事が苦痛になった。
これは、世間では「ひきこもり」というのであろうか。
毎年のように、特にこの時期、皆が新しい第一歩を歩み始めているのを感じると、自分の状況を考えてしまう。
何故?
何故?
私には、それを感じてしまうのだろうか。
感じるだけではなく、朧気ではあるが、見えてくる事があるのはどうしてなのだろうか。
それが、嫌で人の中に行くとこが苦痛になってしまった。
人は話しても信じてはくれないだろう。
あの時の事を。
そう言えば、今頃の事だったような気がする。
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