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しばらくして諦めたのか、泣きながらバスに乗ってきた浜哉は、私の隣に座った。
とりあえず挨拶だなと思い、私はぎこちない笑顔で「おはよう」と言った。
浜哉はまだ泣いていた。
保育園に行きたくない。
浜哉の毎日恒例の駄々こねの理由は、「お母さんと離れたくない」とか、そんな理由だそうだ。
着いてしまえば、なんてことなく友達と楽しく遊んでいる。
私はそれを聞く度に、少しだけいいなぁと思ってしまう。
私だって、保育園になんて行きたくない。
行ったって、私には友達なんかいない。
でも、行かないと怒られる・・・いや、叩かれる。
それが痛くて、怖くて、反抗なんてできない。
私には大人しく行くという選択肢しかないのだ。
お母さんは最初は優しかった。
だけど、ある日を境に変わってしまった。
理由はハッキリとは覚えていないが、私が子供なら誰でもやるような、ほんの少しのいたずらをして叩かれたのが始まりだった。
それからお母さんは、私が少しでも口答えすると私の顔を叩くようになったのだ。
その程度のことでも、まだ保育園児の私には恐怖だった。
だから私は、大人しく、口答えもせず、ただ従うようになった。
そして家だけではなく保育園でも、理不尽な差別はあった。
その時は他の児童からではなく、先生からだった。
覚えていることは、ひらがなの勉強があったのだが私だけ覚えるのが遅くて、廊下に出されて長々と説教をされる。
それがほぼ毎日だ。
そして演奏会などがあると、楽器が苦手な私は特に目をつけられた。
何でこれくらい覚えられないんだとこっぴどく叱られ、居残りだ。
その時からすでに、子供ながらに、自分は何もできない駄目な人間なんだと悟っていた。
家では怒鳴られて叩かれて、保育園でも理不尽に怒られていた私は、どこにも居場所なんてなかった。
保育園にしてすでに私は、孤独を味わっていた。
保育園なんて一番楽しい年のはずなのに、その時からすでに、私の心は冷めきっていた。
そして、大人はみんは理不尽なんだと理解していた。
そして絶対に、こんな大人にはなりたくないと、強く願っていた。
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