~ 幼少記の思い出 ~

3/5

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
従弟である浜哉とは、同じ保育園で家も近く、よく遊んでいた。 浜哉は我が儘だったが、明るく、いつも楽しそうだった。 私は遊び相手がいなかったので、そんな浜哉でも遊んでくれることが嬉しく、遊びやその我が儘によく付き合ってやった。 ごく稀(まれ)に、私も自分の悩みを少しだけ話すことがあった。 と言っても、さすがに全ては話せなかったので、「いつも独りでさみしいの」と、そんなかんじのことを呟くくらいだった。 でも浜哉は、そんな私のことを「羨ましい」と言った。 いつも先生と二人きりでお喋りできて、親とも楽しそうだと、そう言ったのだ。 その時私は、暗闇に突き落とされたような感覚に襲われた。 常に冷たかった心が、もっともっと、冷たく暗い場所に堕とされたような、そんな感覚。 ・・・孤独だ。 唯一の遊び相手の浜哉でさえ、私のことをわかってくれなかった。 繕っていたとはいえ、勇気を出して言った本音を受け止めてほしかった。 なのに、突き放された。 寂しかった。 「羨ましい」 そんなごく普通の何気ない言葉が、私には、私にとっては、鋭く尖った刃物で胸を突き刺されたように感じられた。 言葉は凶器だ。 私は子供ながらに、それを悟った。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加