~ 幼少記の思い出 ~

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私が卒園する頃には、浜哉とはあまり遊ばなくなっていた。 私と遊ぶよりも、友達と遊ぶ方が楽しかったようだ。 まぁ、当然か・・・。 兄とも遊んではいたが、相手をするのが少々めんどくさく、楽しくはなかった。 まだ話していなかったが、私には兄がいる。 兄といっても、軽度だが"知的障害"というものがあり、精神年齢でいえば恐らく小学生に上がる前の私の方が上だったろう。 障害というものをバカにするわけではないが、それだけで両親から特別扱いを受けるのは、まだ子供だった私には納得できなかった。 私は少し口答えすれば叩かれるのに、兄は怒られもしない。 何かを壊したって少し叱られて許される。 私が物を壊したなんていえば、きっとしばらく解放してもらえないだろう。 兄と家の中を走り回っていて、私だけが玄関に一人で追い出され、しばらく家に上げてもらえなかったことを思い出す。 なぜ兄だけ怒られないのかと私も怒った時もあった。 だが、両親は二人して「お前が悪いからだ!」と怒鳴り、少しの間説教を受け、30分ほど物置のような部屋から出してもらえなかった。 小学生に上がる前には、もう諦めていた。 私が可愛くないからだと、そう自分を納得させることで保っていた。 3歳下の妹もいたが、末っ子でまだ小さいので、そんな扱いを受けるのは、私だけだった。 だけど、それが私にとっての当たり前だった。 みんなこうなんだ。 みんなきっと同じ思いをして生きているんだ。 そう思っていないと、やっと作り上げた"偽りの自分"が壊れてしまいそうだったから。 そうして私の入学式の日は近づいていった。 ほんの少しの期待を胸に、私はその日を待った。
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