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身体中が焦げるように熱かった
(夢だ……。これは僕の夢だ。)
ピルムは何度も同じ夢を見ていた。
三年前、ピルムがまだ九つだったころ。両親が村から消えてしまってからずっと。
村が、マヤエ村が燃えてしまう夢だ。
炎は踊るように燃えさかり、家を畑を牛を羊を、そして村人たちを飲みこんでいく。
慌てることはない。いつもと同じことをすればいい。
(これは夢なんだ。安心しろ。眠れ。)
自分自身に言い聞かせる。それだけで、もう一度深い眠りにつくことができていた。
そう、これまでは。
だが、その日は違っていた。
熱さが、消えない。ひりつくような痛みが身体中にまとわりついて離れない。
ピルムはまぶたをゆっくりと開いた。
家の外が明るい。
「もう昼か……」
いや。
ピルムは自分の言葉を否定するように首を振った。
まだ鶏が鳴いていない。朝を告げる銅鑼も鳴っていない。
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