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目覚めと眠りの果て
カイが目を開けると、レイの顔が目の前にあった。
「ああ、良かった。」
私の顔を覗き込んだまま彼が言う。
「気分はどう?階段から落ちたんだ。覚えてる?」
何も言わない私に不安になったのか、彼は早口に言った。それでも私は彼の顔を見つめたまま黙っている。彼と口をききたくないと言う訳では無い。彼の、レイの海の様な青い瞳に見惚れていただけだ。青い青い海の中にいる様。
「カイ?」
とうとう彼が私の頬に手を伸ばす。私はその手にそっと自分の手を重ねて言った。
「……大丈夫。」
彼の手の温もりを確認しながら、私は彼に何か言おうとしたけれどそのまま口を噤んだ。何を言って良いのか分からなくなったからだ。ついさっきまで、覚えていた気がするのに。
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