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榊仁の朝は早い。朝4時に起床し、ランニング、柔軟、筋トレ、仮想組手に朝食前のシャワーまでの2時間を費やす。そして朝食を食べた後は、約3㎞の道程を歩いて通学する。
「ねえ仁、今日こそ一緒に行こうよ」
仁に話しかけるこの男の名は坂本優貴。自称仁の親友で、成績優秀、容姿端麗、身体能力抜群。更に家が金持ちで正義感が強いというギャルゲーの主人公のような男だ。
何時も数人の美少女と行動を共にしている為、男子からは羨望と嫉妬と殺意の混ざった目で見られている。
「別に構わねえけどよ、今日こそって言ってるが別に断ったことなんざ一回もねえだろう」
「だって何時も先に行っちゃうじゃん!」
「そりゃお前等が歩くの遅いからだ」
「だって皆に合わせないと」
優貴の言う「皆」とは勿論取り巻きである美少女達であり、自ら声をかけた仁に合わせるという発想はこの男には無い。例えあったとしても、一般人が仁の速度に合わせて歩くのはかなり大変な事であるのは間違いないが……。
「まあ、なるべくゆっくり歩いてやるよ」
「ありがとう!」
通常、この手の男の下に集まる少女達は自分勝手で邪魔者には容赦のない攻撃的な言動を取る傾向にあるが、仁の風貌や肉体を見てそんな気持ちは消し飛んだようだ。
この日も仁は自分基準でゆっくり歩き、度々立ち止まる優貴達を気に留めず歩き続けた為、優貴達と差が開き続けて20分以上も先に学校に到着した。
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