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(つ、強い……オーガをたった2回の攻撃……しかも魔法や武器じゃなくて格闘で)
サシャが驚くのは当然。オーガを単騎で、しかも瞬殺するなんてことは上級冒険者ですらできるかどうか怪しい。それができる腕前の冒険者であっても、魔法も武器使わずにオーガを屠る事ができる者など何人存在するだろうか……。
「大丈夫か?」
「あ、あぁ……ありがとう」
「怪我はしてないな」
ここでサシャは初めて仁の顔をまともに見た。黒い髪をオールバックにした、肉食獣や猛禽類のような鋭い眼を持つ強面だった。
仁も近くでサシャの顔を見て、改めて可愛いと思った。鮮やかな赤い髪を長く伸ばし、凛とした男勝りで勝ち気な眼をしている。服装は見た目よりも動きやすさに重きを置いたもので、邪魔になる装飾やヒラヒラは一切無い。かと言って無駄に露出が高い訳でもなく、正に冒険者に相応しい服装と言える。
「……」
「どうした?」
「アンタ、名前は?」
「俺の名前は仁だ」
「ジン……」
サシャは何度か仁の名前を呟き、何かを決心したように再び仁の顔を見る。
「オレはサシャ・フレイム。ジン、助けてもらっておいて図々しいのは解ってるが、オレの頼みを聞いてくれないか?」
「内容によるな」
「オレの婚約者を叩きのめしてくれ!」
貴族に自由な恋愛はない。何かの本でそんな文を読んだことがあるのを思い出しながら、仁はサシャの頼みを快諾した。
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