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5大貴族。王国でトップの権力と財力を誇り、戦闘力も高い優れた貴族。人間が扱える魔法は火属性、水属性、風属性、光属性、闇属性の5種類であり、5大貴族とはそれぞれの属性魔法トップの使い手5人が国王により貴族位を与えられたのが始まりである。
そしてそんな5大貴族の1つであるフレイム家の屋敷。その客室のソファーに仁は腰掛けていた。
「君がジン君か。まずは娘の命を助けてくれたことに関して礼を言わせてくれ。ありがとう」
そう言って深々と頭を下げるのは、サシャの父親にしてフレイム家の現当主であるゼル・フレイム。とても誠実で礼儀正しい人間で、代々荒々しい者が多いフレイム家の男としては珍しい優男である。
「いえいえ」
「それに加え、娘が無理な頼みをしてそうだが……」
「この件に関しては下心で受けるので、お礼は要りません」
「下心?」
「はい。娘さんの婚約者を叩きのめしたら、娘さんと結婚させてください」
仁の発言に、発言した本人と道中で既にこの話を終えていたサシャ以外の全員が硬直した。
「……それはフレイム家の権力が目的か?」
「いえ、権力には微塵も興味ありません。娘さんに、サシャに一目惚れしました」
立場上、断腸の思いで一人娘の恩人を疑うゼルに対し、仁は一切の嘘偽りのない本心をぶつける。後ろで話を聞いているサシャの顔が微かに赤くなっているのは、本人を含めて誰も気付いていない。
「……そうか、分かった。疑ってすまなかった……そうなった時にはサシャを頼むよ」
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