第十三章

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マクリンは悠々とした足取りでジュゼ達に近づいた。 「マクリン、気の利いた舞踊をやりやがって、感動したぜー」 アゴンはパチン、パチン、パチーンとこれ見よがしに音を響かせて拍手する。 「そう?私ね、自信がなかったのよー、おまけにドマとルディンとカエイの華麗で力強くて、知性溢れる演出と踊りを目にした後では特にね」 でも嬉しい、私さ、アゴンには念入りに見てもらいたかったから、マクリンはアゴンに抱き着き、勝ち誇ったように体を揺らす。アゴンも本心はともかく、マクリンと一緒になって全身をぶるぶるさせた。 「赤ん坊から幼児、幼児から少年、そこから青年となって家族を持つか、感服したよ。筋を考えたマクリンも素晴らしいじゃないか」 ガモンの精神、しかと受け取った、ハルタンも拍手する。 「ありがとう、ハルタンが頭のいい人でよかった、主題が伝わらないんじゃないかって心配したのよー」 マクリンはハルタンの手をしっかり握り、優越の顔つきで口づけした。ハルタンは少し表情を硬くしつつもマクリンの手の甲に口づけを返す。次いでマクリンは小ばかにするようにアゴンを見た。アゴンは、俺だってすぐに理解したわと言う。マクリンは笑った。 「マクリン、ガモンの舞踊にも圧倒されたけど、それ以上にあなたの笛の音に聞きほれてしまった」 あなたの笛の技術は見事なものね、ジュゼはたった今披露されたマクリンの笛の音を思い返すように彼女の腰に差してある笛を摩る。 「お世辞言わないでよ、私ね、ジュゼの前で笛を吹くことが恥ずかしくてさ、逃げちゃいたいくらいだったのよ」 勇気を振り絞ったの、そこは褒めてねー、マクリンはジュゼの耳元でハレバレとした口調で囁く。マクリンもジュゼを抱擁し、彼女の笛を優し気な手つきで撫でた。ジュゼは、そう、頑張ったのね、ガモンの舞踊には賞賛の気持ちしか湧かないと表向きはにこやかに応じた。 一方でキトは、人数が多けりゃ当然迫力も出るだろうよと小声で愚痴る。ティックとルバも、ガモンの舞踊の主題は別としても、結局数で他三部族に圧力を加えたガモンに難癖つけたい思いが生じた。 フーガはそんな三人の肩を握り、ホランにはガモンの思惑なんか分かってるさと言った。三人は納得して頷く。 リザもマクリンに嫌味を言ってやりたかった。兄のアゴンが、そんな妹の心中を察したのか、内容は俺達ドマが一番だったと呟く。リザは、そうだよねと笑顔になった。 「さあ、みんなー、お疲れ様。私達はこれからガワルに報告に行くからさ、皆は飲み食いしててね」 マクリンが大きく声を出す。するとガモン族の者達が、再び鍋に火を入れ、中に肉に野菜にと新たに具材を放り、シャジーザだけでなく森にある数種の果実を絞り甕に入れたジュースを次々に持って来た。早速子供達がコップを持ってジュースを飲む。ドマ、ルディン、カエイの者達も舞踊を終え、充実した表情でどんぶりとコップを持った。 マクリン、アゴン、ジュゼ、ハルタンの四人は互いに装飾品を交換する。アゴンはモリを、ジュゼは花を、ハルタンは踊りに用いた松明を、マクリンは鳥の羽をそれぞれ差し出した。四人はそれらを身に付ける。 儀式は四部族が舞踊を披露して後、近くにある巨木ガワルに四人の首長達がそれを伝えて終了となる。 「それじゃ行ってくるねー」 マクリンが手を振るとガモン族の者達は一斉に声を上げた。アゴン、ジュゼ、ハルタンも各々の仲間達に向けて右腕を掲げる。仲間達も、おう、おう、おーうと元気に応じた。 マクリンを先頭に四人は密林に入った。
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