大きな、大きな予兆

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デルガは周囲を見渡しつつ、頭を振った。水滴が地上に飛散する。辺り一面土がむき出しの大地。くたびれた、全く水気のない萎れた木々がポツッポツッと点在し、四方には、表面を熱く焼かれたような黒色の岩山が座している。弱い風が漂っている。デルガはピクッと目を細めた。そのままサッと後方を振り向く。 ジジッ、ジジジジ。 空間を微細に震わせる音と共に、一つの物体が徐々に形作られていった。陸地に食い込むような緑黄色のがつしりとした両足、大きな二つの爪、膝から上はズボンを履き、胴には大きなジャンバーを羽織る。その背中にはくっきりと楕円形の筋が走る。太い首、平たい顔、幾分うるんだ両目がデルガを見据えた。 「はじめまして、バグです」 ヒト型の亀(この種はメジアスと呼ばれる)バグは、その体形に似合わず少し掠れたような細い声で挨拶をした。デルガはバグを見回した。 「あなた、瞬間移動が使えるの?」 「ええ、まあ」 「それ隠形じゃないでしょ、この地点にいたのじゃない、それならすぐに気づいたし。テレパシーは?」 「身につけてます」 「だったら何で、直接交信してもかまわないし。こういう状況だから意識は開けてあるから、失礼にあたると思ったの?それにその服、上半身裸でも私は別に気になんか」 「仕事です、金を貰ってる」 「そう、しっかり補佐お願い」 デルガは地上へと向き直ると、左の手の平をかざした。五本の指が微動する。やがて地平線上のごく間近な一点を見つめた。     
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