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盗賊
道中で三日程は特に何も起こらず、順調に温泉地に向かって馬車が走っていました。
事の起こりは四日目の朝でした。
山を越えようとしていた最中、道が意図的に塞がれていました。
人の手で綺麗に切られた木が、山積みされていましたから。
もうお解りかと思いますが、取り囲む様に盗賊が現れました。
「なんて命知らずな・・・と、生徒達は思っているのでしょうね」
魔力を感知できる生徒が私以外にいない為、気付いていない。
彼等が単なる盗賊ではない事に。
「おい、たかが盗賊が魔法を行使出来る僕達に勝てる訳が無いだろう! 怪我したくなければサッサと道を開けろ!」
先輩風を吹かせたかったのか、上級生の男子生徒が啖呵を切った。
「悪いが、学生ごときに馬鹿にされる程、俺達は雑魚じゃない。其れを今からお見せしよう」
盗賊のリーダー格が、召喚魔法を行使して智天使を呼び出す。
後ろに控えていた者達は四大精霊を呼び出す。
「そんな! 智天使に四大精霊迄? 何で盗賊が、こんな凄い者達を召喚出来るんだ!?」
自分達で軽く退治出来ると踏んでいたのに格上であると解り、急に不安が広がり混乱し始める。
落ち着いて周りを見れば解る事なのだが、取り乱しているのは生徒達だけで、従者や冒険者、教師達は静観している。
「さあどうする? 格上の者と対峙した場合、戦わずに逃げるか? 逃げ場を失っていたら諦めるしか無いのか?」
盗賊が一歩前に出るだけで、怯え出す生徒達。
目に涙を浮かべて、絶望感漂う生徒まで出始めた。
そろそろ良いでしょう。
「学園長、茶番は終わりにして頂けますか?」
「え? 何の事だい? 盗賊は退治しないと、皆んな奴隷にされちゃうかもしれないよ?」
「退治して宜しいのですか? お仕置きが必要なら本気で折檻しますが?」
「え? ソレはちょっと・・・」
「盗賊を締め上げて真犯人が誰か判明した場合、その者を公開処刑に致しますが、問題ありませんわよね?」
「ど、同格相手じゃ厳しいんじゃ無いかなぁ~」
「では三対六枚の翼、熾天使セラフィムを呼び出します」
「「「「ほへ!?」」」」
学園長含め盗賊のリーダー格や冒険者、教師迄も同じ様に素っ頓狂な声を上げる。
そんなに驚く事だろうか?
「疲れるので、余りやりたくなかったのですが・・・」
準備段階として天使達を召喚、智天使を召喚、融合魔法で智天使の力を上乗せ。
ここから合唱での上位召喚。
学園祭の魔法コンテストで披露した詠唱の豪華版ですわ。
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