オタクの私は異世界で悪徳令嬢に転生した

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オタクの私は異世界で悪徳令嬢に転生した

 私は今日、大好きな恋愛シミュレーションゲームの裏ルートに初めて入る事が出来た。 「ヤバイ、超嬉しい! 遂に裏ルートを見つけられた。絶対攻略出来ると信じて良かった。魔王様!」  そう、私は敵である魔王様を攻略出来ないか、あらゆるパターンを繰り返し検証し、針の穴を通す緻密さでフラグを掴んだのだった。  まさか彼が裏ルートのフラグだったなんて・・・でもこれで魔王様を攻略出来るのだ! 「魔王様がイケメン過ぎたのが、私の心に火を付けた。敵が攻略出来ない何て誰が決めた! 私は諦めなかった。製作者は敵との禁断の恋を解っていてくれた」  それからの私は、ただひたすらに魔王様との許されざる恋に酔いしれた。  受験勉強そっちのけで。  当然の如く受験には落ちました。  けれど後悔はしていない。  私には魔王様との恋の方が、何よりも大切だったから。  そして遂にエンディングまであと少しの所で、私の人生は交通事故で幕を下ろした。 「君しかあの裏ルートに辿り着かなかったよ。是非とも完全攻略して欲しいから、異世界ファンタジーを満喫して来てよ」  誰かの声が聞こえた気がしたが、私の意識はここで途切れる。  意識が戻った時、最初に見たのは絶世の美女で金髪縦ロールのお嬢様が写った姿見だった。  どう見てもゲームで、ヒロインを邪魔していた悪徳令嬢ですが何か。 「嘘、私があの悪徳令嬢になっている・・・。は! これは私に与えられた使命? 魔王様攻略を達成したかった私の夢が叶ったの? 何にせよ悪徳令嬢であれば、あの最高難易度の裏ルートが簡単に進められる。今はどのタイミングなのかしら!」  ゲームのプロローグでは学園の入学式からだから、多分その時期に近い筈だ。  私は呼び鈴を鳴らしてメイドを呼ぶ。  一度やって見たかったんだよね。 「お呼びですか、お嬢様」 「今日の予定は何だったかしら? 近い内に入学式があったと思うのだけれど」 「はい、お嬢様。明日が入学式でございます。本日のご予定は魔道書のご購入です。今は馬車をご用意している最中で御座います」  成る程、ヒロインは今日街へ到着して、初めての都会ぶりに興奮していた筈だ。  回想シーンでは確か彼女、悪徳令嬢に遭遇していきなり目を付けられるんだっけ?  ど田舎の村娘である庶民を、何故あんなに目の敵にするのか最初は疑問だったけれど、王子攻略の際にその訳が解った。  実は彼女、国王の隠し子だったのだ。  身分が低い筈なのに、何処か高貴な雰囲気を纏った彼女に嫉妬していたのだ。
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