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ファーストコンタクト
「ならば私の行動は決まっている。裏ルートを進む為の最短を選ばせて貰うだけよ」
こうして私の異世界悪徳令嬢生活が開始されたのだった。
・・・異世界で良いんだよね?
~悪徳令嬢移動中~
「ひゃあ、ご、ごめんなさい! 前をよく見ていませんでした」
曲がり角でぶつかるこのシチュエーション、男女ならば恋に落ちる素敵イベント。
でも、私と貴女は同性だからそれはない。
あ、百合なら有りだったり?
「お気を付けなさい、それと怪我は無いかしら。そう言えば見ない顔ね?」
わざとらしいかな?
倒れたヒロインのマールに手を差し出す。
「ありがとうございます。怪我はありません。私は今日、街に来たばかりなんです!」
「そう、なら何処に何があるか解らないでしょう? 良ければ私が案内してあげますわ」
「本当ですか! 街で色々買い揃えないといけなかったんです。助かります」
「自己紹介しましょうか。私はローズ・ビリアヌス・フリューヒド。明日学園に入学するの」
「え、貴女も入学するんですか! あ、私はマールって言います。明日の入学に際して、足りていなかった物を買おうとしていました」
今日の遭遇は私だけの筈だが、もしかしたら攻略対象も街にいるかもしれない。
王子は無理だとしても、生徒会長と魔術講師なら可能性がある。
どうせ彼女を監視している人は街の事情に詳しいだろう、二人が今街を出歩いているか探させよう。
私が居るのだから、監視を続ける意味がない。
チラリと周りを見れば、上質な服を着ているのにフードを被っている人が私達を見ていた。
メイドをその人物に向かわせて、二人の動向を探るよう命じる伝言を伝えた。
私に向かい会釈した監視者は離れて行った。
「あの、何かありましたか?」
「いいえ、入学前に足りない物は、ある程度解っています。先ずは制服を買いに行きましょう」
「は、はい」
マールが子犬のように私の後ろを付いて来る。
王族の血が入っているから、とても可愛らしい。
彼女の所持金は、本来ならば庶民が持てる金額では無い。
ゲームでは回想で済まされていたが、街で買い物をするなら持っていないと逆に足りないくらいだ。
「初めからイージーモードだったのね、ヒロインは」
学園指定の服飾店で服を購入後、筆記用具を揃えてから魔道書を買いに来た。
魔術講師が街を出歩いていた様で、先程魔道書店に入ったからだ。
「私は予約していた本の受け取りに、店長と話をします。貴女はその間、店の中を見て回っていると良いですわ」
ファーストコンタクトは、攻略対象人気No.1だった彼からだ。
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