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呼び方
「丁度良いですわ、ボルクス様。彼女は私達と同じ新入生のマールさんです。後でお城を案内して頂けるかしら?」
「カール・ギゼア・ボルクスだ。この国の王子だから城の案内なら任せておけ。宝物庫だって案内してやれるぞ」
身分が高い割には他者を蔑まず、寧ろ明け透けに接する姿は国民に愛される器だ。
「恐れ多いです! あの、宝物庫は除いて案内して頂けますでしょうか?」
「ははは、冗談だ。それにしてもお前は誰かに似ている気がする。女性の顔は忘れた事がないのだが、誰に似ていたのだろう?」
「カール。それは自慢なのか? それとも口説いているのか?」
「違う、本当に誰かに似ているのだ。まぁ、今は置いておこう。ミード、入学式の話をしろ」
「判った、入学式の新入生挨拶は君がする事になったから宜しく頼むぞ? スピーチの原稿はすでに用意しておいたからな」
「手回しが早いのは良い事だが、人の了承を得てない内に決まっているのは感心しないな」
「有名税だから仕方ない。新入生に王子が含まれているのだから、代表にしない訳がないだろう?」
「予想はしていたさ、だが面倒なだけだ。本来ならば主席合格のローズがする筈だったろうが」
「王子の挨拶が聞けるのですから、私は喜んでお譲りいたしますわ」
裏話が聞けて嬉しいが、私がスピーチしなくてはならない事だけは断固阻止だ。
学園で目立つのは、ヒロインとのイザコザだけで十分なのだ。
「どうせ彼女は、お前の取り巻きにするつもりなんだろう? ならば俺の事をそんな他人行儀な言い方で呼ぶな」
「ふふ、判りました、カール。マールも王子の事は出来るだけ、カールと呼んであげてね?」
「カール様、で宜しいでしょうか?」
「許可する。俺はボルクスの名を出されるのがあまり好きではない。親の七光りで見られるのが我慢ならん。まぁ、赤の他人に突然カールと呼ばれる言われは無いがな」
お昼を軽く済ませ、お城へ向かう四人。
なお護衛、監視、メイドは数に入れていない。
「いつ来てもお城は萎縮してしまうな。私が入る事は滅多にないから、良い機会ではあるのだが」
「周りに聞いている者も居ないし、兄さんも他人行儀な感じは辞めてくれよ」
「ついな。幼い頃は頻繁に来てはいたが、生徒会長になってからは学園のトップとして、立場をわきまえる様にしている」
「年が一つ上でしたから、先に学園に入られましたけれど、入学して直ぐ生徒会長に抜擢されたのですから、自慢の兄様ですわ」
「恥ずかしいから、ローズは兄様と呼ばないでくれ」
「判っています、ミード先輩」
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