273人が本棚に入れています
本棚に追加
暴露
城の門番に会釈して、城の中に入る。
やっぱりゲームで見るより、臨場感があるな。
気分はお姫様ですよ。
「最近はローズまで城に訪れなくなって、正直寂しいぞ」
「私も学園に通う身として、淑女の嗜みを身につけなくてはいけませんから。もう幼い頃の様に、おいそれとカールと会う事は出来ません。ご学友を作り、その方を連れて来れば宜しいかと」
「解ってはいる。だが幼馴染みである親友の二人と、疎遠になるのはどうにも耐えられぬ」
「こうして身内の時だけは、あの頃と同じ様には心懸けるから、普段は我慢してね?」
「今日位は泊まっていけ。家の方には使いを走らせる。いいな?」
「はいはい、寂しん坊のカールを放っては置けないものね」
「仕方ないな、今日だけだぞ?」
「あ、あの。私は・・・」
「ここまで来て一人だけ帰す訳が無かろう。勿論、お前も泊まって行け」
「は、ハイィ!」
さて、本来なら夏のイベントだけれど、すっ飛ばさせて貰おうかしら。
夏はやる事が沢山あり過ぎて、今の内にやれるなら、後々楽になるからね。
「城の案内が終わったら、国王様に謁見させて貰える? 伝えたい事があるの」
「そうか。父上も久し振りにローズの顔を見たいだろうし、伝えておく」
「ありがとう。さあ、どこから案内してくれるのかしら?」
私達は、城のあちこちを散策したのだった。
ゲームと同じ景色でも、自分の足で歩くと全然違って見えるのね。
マールが攻略しない場合は、私がカールと結婚するのだけれど、魔王様を攻略する今の状況では、それすらも踏み越える必要がある。
戦争になったら、ここもタダでは済まないのだろう。
見納めになるかも知れないから、しっかりと目に焼き付ける。
予めカールが伝令をしていた様で、散策中に謁見の許可が降りて近衛兵が迎えに来た。
「久しいな、ローズよ。元気にしていたか?」
「ハイ、国王様もお変わりない様で。今日は伝えたい事が有り、謁見を申し入れさせて頂きました」
「堅苦しいぞ、伝えたい事とはなんだ?」
「彼女の顔を見て頂けたのなら、お解りかと存じます」
私は後ろで緊張の余り、下を向いたままのマールの横に連れ添い、国王に顔を向けさせる。
「な!? そなたは、まさか・・・」
「?」
マールは何がなんだか解らない様だ。
まぁ、ゲームでは国王から伝えられるからなー。
「彼女の事をカールにも話してあげてください。これから同じ学園で学ぶのです。何時迄も他人のままでは、可哀想ではありませんか?」
「な! ・・・知っていたのか、ローズよ」
前世から知っていました。
ゲームの知識で。
最初のコメントを投稿しよう!