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明かされる出自
「単なる田舎の庶民が、学園に試験も受けずに入れる訳が有りません。それに今日、監視していた者とも面識がありました。王宮護衛部隊に居た彼が、単なる子供を監視するでしょうか?」
「むう、そこまでバレていたのか」
「大方、学園で出会わせて少しずつ打ち解けてから、城に招いて明かすつもりだったのでしょう?」
「本気でお前をカールの妃に迎えられる様に、今からでも婚約せぬか?」
「まだ幼馴染みの感が抜けきれていませんから、その話はまだ早いかと。学園で素敵な出会いがあるかも知れません。何より、王子が蔑ろでは有りませんか?」
「俺は別に構わないぞ!」
「知っていますか、カール? 初恋は実らないのだと」
「なっ! 何を言っている?」
「フフフ、今は私の事より彼女を優先して下さいな。母親は違えど血の繋がったご兄妹でしてよ?」
「「「ハア!?」」」
「うむ。もう少し後で話そうと思っていたが、これも良い機会なのだろう。カールよ。そこにいる娘は今は亡き第二王妃の子、つまりワシの隠し子だ」
「何ですって!」
「あの頃は第一王妃と第二王妃で、派閥が別れていた。元より身体の弱かった第二王妃の忘れ形見が居たと知れたら、この国が派閥争いに巻き込まれていただろう」
この話は、ゲーム中では回想シーンとして流れていたっけ。
「彼女を第二王妃が亡くなって直ぐに、人目へ付かぬ田舎の村に匿ったのだ。月日が流れて第一王妃の派閥も抑え込む事が出来、学園に通える年となったので、より安全な所で見守る事にしたのだ」
例え暗殺者が雇われても、警備が盤石すぎてネズミ一匹入る隙間がなく、外からの侵入が不可能レベルの要塞だったりするのだ。
恐るべし学園。
因みに城下街の中にも監視している人達が居るので、怪しい人は速攻で捕まる。
「マール。信じられないかも知れないけれど、貴女はここに居る国王様の実の娘よ。そして王子であるカールとは、血の繋がった兄妹なの」
「え、え? うえぇ!」
「今日は今迄で一番驚く日だな。まさかカールに兄妹が居たなんて・・・もう兄さんと呼ばせない方がいいかな?」
「それは断る。俺にとってミードは血の繋がりが無くても、兄さんだ!」
「ははは。それじゃあこれからはマール君も、私を兄さんと呼ぶかい?」
「え? あ、はい」
「大分混乱しているわね。今日は泊まらせて頂けるから、このまま部屋に連れて行くわね? 明日になったら落ち着くでしょうから」
「ああ、任せる」
カールが私に信頼した眼差しで頷く。
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