意外な選択肢

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意外な選択肢

 翌日城から馬車で学園に行き、入学式は恙無く終わって、私達は教室へと流れて行く。  魔術講師の先生が、教室に入り授業が始まる。 「これから君達のクラスを担当する、ベルモーセスです。今日はまず、魔術について再確認して行きましょう。入学出来た君達は既に魔法を使えるでしょうが、ただ使っているだけの者が多いです。魔法を真の意味で使いこなすには、魔術を深く理解しないといけません」  そう言って黒板にツラツラと、魔術理論を書き始める。  魔法を行使するのに必要な魔力から、増幅する為に展開させる魔法陣に至るまで、幅広く網羅しながら解説する。 「先生。魔道具に使われている魔石は、どうやって手に入れるのですか?」  生徒の一人が、気になっていた事を質問した。  魔石は魔力が少ない者でも、魔法が使える様に魔道具に組み込まれているアイテムだ。  魔法陣を展開せずとも魔力が増幅するので、ある意味誰でも使える便利な物だ。  しかし、その入手方法については語られていなかった。 「君達には課外授業の時に嫌でも知る事になるから、今は教えません。それよりも魔道具に使われる、魔術記号の方を暗記して欲しいです」  魔術記号は記号単体だけでは意味を持たないが、組み合わせる事で魔石を媒介にして、様々な効果を発揮するのだ。  魔力がバッテリー、魔石が電池、魔術記号が基盤と認識すれば問題無いのだろう。  魔法陣に関しては、魔力を制御して魔術記号に似た文様を展開する事で、その後に行使される魔法の威力が格段に向上したり、放たれる数が増えたり、射程距離が伸びたりと効果は様々だ。  そして最後に宿題を出された。  その内容は、自分が得意とする魔法の応用。  期限は来週までで、その日に行われる実技テストで披露する事になった。 「今日は私の家に帰るから、マールは来週まで私の家で下宿なさい。貴女が魔法を使える様に、学園が終わってから毎日特訓をします」 「はい、ローズお姉様!」  クラスが王子、私、マールの三人一緒になっているのはゲームの時から解っていたが、裏設定はきっと国王の指示が有ったのだと思われる。  魔法が最初使えないヒロインは、王子や魔術講師に教えを請い、深く関わる事で魔法も恋も発展するのだ。  だがこの時、ゲームでは何故か悪徳令嬢に教えを請う選択肢が存在していたのだ。  初めは生徒会長ルートの伏線なのかと邪推もしていたが、この選択肢の本当の意味は裏ルートにあったのだ。 「マールには才能があるわ。私の言う通りにすれば、直ぐに魔法が使える様になりましてよ」
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