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「俺は、自分がそうしたいって思ってるから、ここにいるんだよ。ワガママなんだ、俺」
そして優介は、とある疑問を抱く。
自分の答えは決まっている。それなら、楓は……。
どうするか迷ったが、他に会話が思い浮かばない優介は、おそるおそる口にした。
「……楓は――」
「……え?」
「楓は……どうして俺と一緒にいるんだ?」
「……」
楓は優介の顔を見つめて、言葉を探すように目の前の海に視線を戻した。
「私は……」
そして楓は、優介に顔を向け小さく微笑む。
「……私は、優介くんと一緒にいたいから……。優介くんと一緒にいると、とても、暖かい気持ちになれるから……だから……――」
楓にとって、それは精いっぱいの言葉だった。彼女の中の気持ちを、想いを、感情を、全てを込めた、心からの言葉だった。
楓の瞳は揺れ、頬は桃色に染まる。
「楓……」
時が止まったように、顔を合わせる二人。
優介と楓の鼓動は高鳴り、重なり、閉じ込めていた気持ちが溢れ始めていた。
楓は瞳を閉じ、優介もまた目を細める。
ゆっくりと、少しずつ距離は近付いていき……やがて二人の唇は、そっと触れ合った……――。
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