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「……体調が悪いんですか?」
「ええ。今は落ち着いて眠っているわ。でも、まだちょっと具合が悪いの。本当にごめんね」
「そう……ですか……」
優介は落胆する。
その時――。
「――優介くん?」
家の奥から、聞き慣れた声が響いた。
優介と凪咲がその方向に顔を向けると、そこには、寝間着姿の楓が。
「楓、起きてたの?」
「ううん。ちょっと目が覚めたの。だから、飲み物を飲もうと思って……」
凪咲と会話をしながら、楓は時折玄関に立つ優介に視線を送る。
元気そうで良かった――。
安堵した優介は、楓に軽く手を振る。すると彼女もまた、笑顔で手を振り返した。
二人のやり取りを見つめる凪咲の表情は柔らかい。しかしすぐに顔を引き締め、楓に言う。
「……楓、優介くんが来て嬉しいのは分かるけど、今日は寝てないとダメよ。お父さんにも言われているじゃない」
「それは、そうだけど……。今は、体調もいいから……。それに、ずっと寝ていたから……その……」
「……誰かと話したいってこと?」
楓は小さく頷く。彼女の本心を察していた凪咲は、呆れるように溜め息を吐いた。
「……まったく。楓の場合、誰かじゃなくて、優介くんと話したいんでしょ? ほんと、仲良いんだから……」
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