眠りの国のアリス

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眠りの国のアリス

――誰が迷い込んだ森の中 誰が迷わせた森の中 ウサギは野山を駆け巡り 少女は追いかけ森の中 さあさあ皆さん寄っといで 物語の幕開けさ ……歌が聞こえる。誰かが歌っているのだろうか、とても愉快で楽しげな歌。 その歌を歌うのは……だれ? 「眠りの国へようこそ、可愛いアリス。君はどんな物語を謳ってくれるのかな?」 歌を歌う声は、楽しそうにそう言葉を続けた。その言葉に、意識を浮上するのを感じる。 「……ここは?」 真っ黒な暗闇の中。目の前には、黒い耳を生やした少年。彼だけが光を放ち、存在する世界。 顔立ちの整った黒い瞳の少年は、私が起き上がったのを見て微笑んだ。 そして、嬉しそうに言葉を紡ぐ。 「こんにちは、眠りの国のアリス。さあ、僕を追っておいで。アリスはウサギを追いかけるものさ」 「……君は?」 「僕は黒ウサギ。この国の案内役。さあ、追いかけておいで。君がどうしてここにいるのか、ここは何なのか。すべての疑問は、眠りの国が教えてくれる」 黒ウサギと名乗った少年が身を翻して走りだそうとするのを、私は「待って」と引き止めた。黒ウサギはくるりとこちらを向く。 「なあに? まだ何かあるの?」     
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