第1章 始まり

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「うっ、うわっ!」 モンスターの存在に気づき、そう声を上げた時にはもう遅かった。 モンスターの前足が、僕の身体を掬い上げる。 「フシャー!」 次にモンスターが鳴いた時には、僕は森の中を飛んでいた。 ああ、これで何回目だろう。 そんなことを思いながら、僕は意識を手放した。 「……」 どれほど意識を失っていただろう。戻り始めた意識の中で、声が聞こえた。 「……」 「……」 混ざり合う複数の声に、僕は目を覚ました。ぼんやりとしていた視界は、やがて、はっきりとしたものへと変わった。 どこだ、ここ。 森の中にいたはずの僕の目には、規則正しくはられた木材が映った。 小屋……いや、民家か? 視線を巡らせると、長方形の小さなガラスから、建ち並ぶ民家と行き交う人々が見えた。そのずっと奥には、森が見えていた。 村? この部屋にも、村の様子にも、何一つ見覚えがなかった。 いったいここは…… 「おや、気がついたかい」 考える僕の顔の前に、突然、老婆の顔が現れた。 「わっ!」 僕は思わず声を上げ、飛び起きた。 「痛っ」 頭に激しい痛みが走った。 「あらあら。無理しないで、もう少し休んでなさい」 老婆は僕の身体を支えながら、ゆっくりとベッドに寝かせてくれた。 「すみません」 謝る僕に、 「いいのよ」 と言って、老婆は布団をかけてくれた。 「あの、ここは?」 僕は、ベッドに仰向けになったまま、老婆に尋ねた。 「ここかい。ここは、アルジャーノ村だよ」 「アルジャーノ村?」 聞いたことのない村だ。 「小さい村だからね、聞いたことないかもしれないね」 そう言って、老婆はニコリと笑った。目尻のシワが深くなる。なんだかほっとする、優しい笑みだ。 「私はシアン。こっちは、孫のウェルシュだよ」 シアンと名乗った老婆は、近くにいた少年を自分の元に引き寄せた。 10歳にも満たないくらいだろうか。少年は、真っ直ぐに僕を見ていた。 「向こうに息子たちもいるから、後で紹介するよ」 「あ、あの、シアンさん」 「なんだい?」 「僕、どうしてここに?」 「おや、覚えてないのかい? あんた、村の入口で倒れてたんだよ。それをたまたま息子が見つけてね、それで、家までおぶってきたってわけさ」 「村の入口で……そうだったんですか」 なるほど、この村まで飛ばされたってわけか。 「ご迷惑をおかけして、すみません」 「迷惑だなんてそんな、気にすることじゃないよ。
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