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「うっ、うわっ!」
モンスターの存在に気づき、そう声を上げた時にはもう遅かった。
モンスターの前足が、僕の身体を掬い上げる。
「フシャー!」
次にモンスターが鳴いた時には、僕は森の中を飛んでいた。
ああ、これで何回目だろう。
そんなことを思いながら、僕は意識を手放した。
「……」
どれほど意識を失っていただろう。戻り始めた意識の中で、声が聞こえた。
「……」
「……」
混ざり合う複数の声に、僕は目を覚ました。ぼんやりとしていた視界は、やがて、はっきりとしたものへと変わった。
どこだ、ここ。
森の中にいたはずの僕の目には、規則正しくはられた木材が映った。
小屋……いや、民家か?
視線を巡らせると、長方形の小さなガラスから、建ち並ぶ民家と行き交う人々が見えた。そのずっと奥には、森が見えていた。
村?
この部屋にも、村の様子にも、何一つ見覚えがなかった。
いったいここは……
「おや、気がついたかい」
考える僕の顔の前に、突然、老婆の顔が現れた。
「わっ!」
僕は思わず声を上げ、飛び起きた。
「痛っ」
頭に激しい痛みが走った。
「あらあら。無理しないで、もう少し休んでなさい」
老婆は僕の身体を支えながら、ゆっくりとベッドに寝かせてくれた。
「すみません」
謝る僕に、
「いいのよ」
と言って、老婆は布団をかけてくれた。
「あの、ここは?」
僕は、ベッドに仰向けになったまま、老婆に尋ねた。
「ここかい。ここは、アルジャーノ村だよ」
「アルジャーノ村?」
聞いたことのない村だ。
「小さい村だからね、聞いたことないかもしれないね」
そう言って、老婆はニコリと笑った。目尻のシワが深くなる。なんだかほっとする、優しい笑みだ。
「私はシアン。こっちは、孫のウェルシュだよ」
シアンと名乗った老婆は、近くにいた少年を自分の元に引き寄せた。
10歳にも満たないくらいだろうか。少年は、真っ直ぐに僕を見ていた。
「向こうに息子たちもいるから、後で紹介するよ」
「あ、あの、シアンさん」
「なんだい?」
「僕、どうしてここに?」
「おや、覚えてないのかい? あんた、村の入口で倒れてたんだよ。それをたまたま息子が見つけてね、それで、家までおぶってきたってわけさ」
「村の入口で……そうだったんですか」
なるほど、この村まで飛ばされたってわけか。
「ご迷惑をおかけして、すみません」
「迷惑だなんてそんな、気にすることじゃないよ。
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