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学校の図書室にしてはとても充実した蔵書の数にうっとりしつつ、私は本棚を眺める。
毎日来ても飽きることがない。
ただ、1つだけ、不可解なことがあった。
また今日も来てる…。
おそらく先輩だと思われる男子が、いつも同じ椅子に座っているのだ。
この1ヶ月、毎日本を読むでもなく、ぼんやりと図書室の窓から外を見ている。
さすがに気にはなっているのだが、本を読む方が大切なので、今日もそっと本を読み始める。
文庫の小説を1冊読み終えたところだった。
「君、毎日来てるよね。何しに来てるの?」
突然聞こえた声が、私に向けられていることに気づくのに、少し間が空いた。
「…私のことですか?」
これまでまったく話したことのない先輩が、何故か今日は真っ直ぐ私を見ている。
「君のこと」
先輩は軽く頷いた。図書室に来るのに、何しに来てるも何もないと思うのだが。
「えっと、本を読みに来てますが」
むしろ、あなたは何をしに来てるんですかと聞きたかったが、とりあえず聞かれたことにだけ答える。
「そっか。じゃあ君じゃないのか…」
先輩は何故かがっかりしたようで、はぁ、とため息をついた。その様子に、私は少しむっとする。
「あのですね、ここは図書室ですよ。図書室に本を読みに来る以外、何の用事があるっていうんですか」
私からしてみれば、毎日図書室に来ているのに、ぼーっとしている先輩の方が信じられない。こんなに本に囲まれているというのに。
「あー、ごめんね。実は人を待ってて。もしかして、君がそうなんじゃないかって思ってたものだから」
先輩は、困ったような顔で笑った。
いつもぼーっとしている顔しか見たことがなかった私は、何だか別の人を見ているような気持ちになる。
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