図書室の変人

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「そうだ!せっかくだから、眠くならないオススメの本を教えてよ」  突然話を変えてきた先輩に、私は戸惑った。 「本題は終わったのに、まだ話を続けるんですか?」  ついまた、ストレートに聞いてしまう。 家族以外の人と会話をするというのが久しぶりすぎて、会話の感覚がよくわからなかった。 「ほら、何とかも縁っていうじゃない」 「袖振り合うも多生の縁ですか」 「そうそう、それそれ」  何故この人はこんなに嬉しそうなのだろう、と思いながら、私は先輩を見た。 私は表情が豊かな方ではないと思う。本のストーリーに泣いたり笑ったりするけれど、それは心の中でのことであり、誰かに表情を見せることなんてなかったからだ。 「あの…先輩、私先輩のことよく知りませんし、オススメ出来る本がわかりません」  本というのは、無限にあると私は思っている。今この瞬間にも、新しい本は生まれているのだ。本になっていない文章も含めれば、それこそ無限だろう。 本の難易度も人によって違う。ミステリーが好きな人もいれば、ファンタジーが好きな人もいる。 その人の好みがわからなければ、何を薦めて良いかなんてわからない。 ちなみに、私は本であれば大体挑戦する。苦手ジャンルはあるけれど、それはそれで、読み終えたときの達成感が好きなのだ。 「じゃあ、今日から俺と友達になろう」 「…は?」  本日2度目の呟きが漏れてしまった。 まじまじと先輩を見るが、変わらずにこにこしていて、何を考えているのかわからなかった。
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