図書室の変人

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「先輩、友達いないんですか?」  聞いてはみたものの、内心はそうは思っていなかった。 私と違ってにこにこしている先輩は、はっきり言ってとても変わっていると思う。 変わっているとは思うが、友達は多そうなタイプだろう。こんな私にも話しかけてくるぐらいだ。 「友達はいるよ。でも、君何か面白いから、仲良くなったら楽しいかなと思って」  面白い。 周りの人に、変だ変だと言われることはよくあった。陰で言われていることは、大抵本人の耳に入るものである。 私が周りの人に比べて変なのは客観的な事実だったから、特に気にはしていなかった。 しかし、面白いと言われたのは初めてだ。 「特に面白味のある人間ではないと思いますけど…」  そう言うと、先輩はまた笑った。  先輩は、楽しそうに笑う人だな。  そう思った瞬間、私の中で何か、ふわふわとしたものが生まれたのを感じた。 これまで生きてきて、それは初めての感覚。  なんだろう、なんかふわふわする。なんか、落ち着かない。 「面白いよ。今まで会ったことないタイプだし」  その言葉に、ふわふわしたものがしぼんでいく。  私は珍獣か。  つい先輩を睨み付けてしまう。 「あ、ごめんね。そうじゃなくて、えっと…話してると楽しいから、もっと話したいなってこと」  今度はまたふわふわが膨らんで来る。私の中は、一体どうしてしまったのだろう。 普段揺れることのない感情が、激しく動き回っていた。  まさかこれは。1ヶ月ほとんど顔を合わせているから、初対面…ではないが、今日初めて話した人相手に。 いくら対人偏差値が底辺だからといって、まさか。 好きになってしまったのだろうか。  目まぐるしい葛藤の末の結論に、私は驚愕した。 「…どうしたの?俺と仲良くするのは、やっぱり嫌かな。友達にも、変なヤツだってよく言われるんだよね」  固まってしまった私を覗きこみ、先輩は悲しそうに呟いた。
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