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「…変なヤツさでは、負けませんよ」
先輩が悲しんでる、なんとかしなければ、と思った私の口からは、変な言葉しか出てこなかった。
こんなとき、対人偏差値の低さが悔やまれる。
しかし、先輩はそんな私の言葉にも、楽しそうに笑った。
本当に表情が豊かな人だ。
「じゃあ、変なヤツ同士で気が合うかもね」
果たして、それは良いことなんだろうかと思ったけれど、気が合うと言われた私は嬉しくて、少しだけ笑った。
「よし、じゃあ明日もここで待ち合わせにしよう。ラブレターはイタズラだったけど…君は来てくれる?」
気がつけば、私は頷いていた。
それを見た先輩も満足そうに頷くと、椅子に置いていた鞄を手に取る。
「ありがとう。じゃあ今日は、もう遅いから帰ろうな」
私は慌てて本を片付けると、自分の鞄を手に持った。
私は今日ここに、本を読みに来たはずなのだが。
まだ1冊しか読めていないのに、不思議と心は弾んでいた。
まさか、私が本よりも人と話すことを楽しみにする日が来るなんて。
現実の世界での冒険が、始まろうとしていた。
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