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AM3:17。 もう何回目だろう。 スマホの時計を確認する。 「……あー、魔王様か」 寝付けない理由に、ようやく思い当たった。 23歳を過ぎた頃から、毎月のように決まって2回、眠れなくなる日がある。 排卵日と生理が始まる2、3日前。 どんなに仕事で疲れて帰ってきても、妙に頭が冴えてしまってどうにもならないんだ。 生理の前になるとイライラしたり、落ち込みやすくなったり、頭痛だ肩こりだとあちこちが痛くなったり、疲れやすくなったり。 そんな不調のことをPMS、月経前症候群というらしくて。 不眠もその1つ。 それを私は「魔王様の襲撃」と呼んでるんだけど。 まだ今月の排卵日には3日ほど早いはずだから油断してた。 でもこの感じは間違いない。 眠ろうとしているはずなのに、体がそれを拒否しているようで。 普段、どうやって寝ているのかすらわからなくなる。 時計を見る度に、びっくりするぐらい時が過ぎていて。 でもなぜだか焦る気持ちは湧かなくて。 まるで最初から「眠る」という行為そのものが存在していないかのような感覚になる。 まぁ、今日は幸いにも仕事は休みだ。 今眠れなくても昼寝ができる。 「あ、ダメだ、涼太(りょうた)と会うんだった」 デートの約束を思い出して、一気にテンションが下がった。 うわー、めんどくさい。 2週間ぶりに彼氏と会うというのに、思わずため息が零れる。 魔王様が来ているときはろくなことがない。 たぶんケンカはするだろうな。 考えただけで憂鬱になる。 「……やだなぁ」 この前会ったときは、ひどい生理痛でしんどくて、ちょっとお茶しただけで帰ってしまった。 お互い仕事が忙しくてなかなか時間が取れないから、今日を逃せば次はまたしばらく先になってしまうだろう。 そう思うとドタキャンするわけにもいかないんだよなぁ。 女ってめんどくさい。 生理やPMSが来る度に思う。 「とりあえず、DVDでも見よっかな」 眠ることは諦めた。
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