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――ヴーヴー、ヴーヴー。
「……んん」
枕元に置いてあるはずのスマホに手を伸ばそうとしてハッとする。
「うそっ? 寝ちゃってた!?」
テレビには観ていた映画のDVDのメニュー画面が表示されたままで。
カーテン越しにでも、すでに太陽が昇っているのはわかって。
スマホの着信画面には涼太の名前。
やってしまった。
「……もしもし」
「礼華! どうしたんだよ、待ち合わせの時間とっくに過ぎてるぞ」
うわー、怒ってるよね。
10時に約束してあったのに、もう11時近かった。
「……ごめん」
私の言葉に、涼太はわざとらしいほど大きくため息をついた。
「また寝てたの?」
「ごめんなさい」
もうひとつため息が聞こえる。
「まぁ、事故とかじゃなくてよかったけど。昨日、残業でもしてた?」
「ううん」
「じゃあアレか」
「うん」
涼太も魔王様のことは知ってる。
今までにも寝過ごしたり、体調が悪かったりで、遅刻やドタキャンしたことがあった。
その度にちょっと寂しそうにしながらも「仕方ないな、無理しないで」って言ってくれる涼太の優しさが、とても申し訳なくて、でもありがたかった。
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