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「ちーやん、河谷にクッキーあげたんだって?」
翌日の部活の時間、牧野先輩と平田先輩が家庭科室にやって来るなりニヤニヤしながら言ってきた。
一瞬『河谷』が誰の事か分からず首を傾げる。
「誤魔化したってダメなんだから。バス停でクッキーもらったって言って河谷喜んでたよ。あいつ、おかっぱって言ってたから絶対にちーやんの事だと思った!」
「ねぇねぇ、もしかしてあいつの事好きなの?」
バス停とクッキーで漸く思い出した途端に、先輩が放った好きの言葉が動揺を誘う。
「まっまさか! 違いますよ。昨日初めて存在知ったんですから!」
赤面症の私はこんな風に少しからかわれただけでもすぐに赤くなる。
「いやいや、好きになるきっかけなんて分かんないものよ?」
「そうそう。私達、協力するって」
そう言ってにやにやする二人の先輩は、その日作った豚まんを私にみんなより少し多く持たせた。
二人に悪気が無いからこそ、断りにくい。
仕方なくそれを受け取る。
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