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知ってから、気付かなければ良かったと後悔する。
明日からどんな顔して同じバス停に並べば良いのか。
もう、直視できない。
声も掛けられない。
食べ物も渡せない。
この気持ちに気付いた今だから思う。
彼に見られるだけで恥ずかしくて蒸発してしまう。
きっと。
どうしよう……。
漸くバス停に逃げ込む。
「あ、あのさ!」
「きゃっ」
突然大声を掛けられて肩が跳ねる。
その声の主は、見なくても誰か分かる。
そっと声の方を振り返った。
その意外に近い距離に固まる。
だっダメだ。
心の準備もしていない。
慌てて目を逸らした。
「すみません、余計な事をしてっ!」
謝りの言葉に彼の戸惑いが伝わる。
そもそもクッキーなんてあげたのが間違いだった。
恥ずかしさに涙が滲む。
「あ、いや……。サンキュ。旨かった」
恥ずかしくて逃げたいのに、ここで逃げたら意識しすぎなのがバレバレ。
牧野先輩と平田先輩を恨む。
あの二人の言葉がなければきっと、私は今も彼への想いに気付かないままでいられたのに。
俯く私に彼はきっと困惑している。
嫌な沈黙がいつまでも流れる。
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