正義のジャン

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正義のジャン

 家の事は忘れた。忘れるようにと言われたから。  誓ったのだ、私は生涯自らが何者であるかは語らない。  なぜそう誓う事になったのか、その事実に興味は無い。知らない方がいいとも云われた。  知らない事が、正しい事と諭された。つまり、知ってしまう事は悪しき事だろう。  すでに誓った事だ。  私は、正義を世にもたらす為に在る者。全てを『無』とし、自らという事さえ失ってもそれだけは変わらない。誓ったのだ。  誓いこそが私の『正義』  真実のあり様など関係ない。それは、正義ではないのだと云う事は知っている。私は……真実など求めない。誓いの元に、自らが正義であるが為に。時に、真実にも目を瞑ろう。  仮面を。  私に正義の誓いを思い出させた、同時に正義とは何であるかを迷わせた、その為に負った醜い傷を隠す為に。そして同時に、決して全ての『迷い』を見ない為に。  正義だけを見る為にあえて、私は片方の目を瞑ろう。 *** *** ***  のどかな所だ。定期的にやってきては脅かす、魔物達の襲撃を除けば。赴任して来て初め、それさえなければこの町は平和だと説明されその通りだと思った。     
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