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毒盛りの料理長
悪かった所から上げるとすれば、まずは、人相だろう。
仕事を始める前に身支度を整え、錆び始めた鏡を覗き込みながら何時も思う事を今日も考えてしまう。
はっきり言って、私から言ってもこの顔はよろしくない。この鏡が真実を写しているならば、の話ではあるが。
いや、鏡は真実を映すもの。
そこに見える景色を歪めているのは何時でも人の瞳、あるいはその奥にある人の意識だろう。
我ながらがっかりな顔だ。
必死にたるんだ肉を引っ張ってみるも無駄、まず骨格からしておかしい、何が原因か左右に少しずつずれている。下あごが異常に立派に育ちすぎている所為か、噛み合わせも悪い。
あまり良い食事をしてこなかったのだろう、
昔世話になった厨房の、料理長から言われた言葉を思い出している。
立派な人だった。人相の悪さから育ちの悪さ、ひいては食生活の乱れまで一瞬で見抜いて見せた料理長だけが私を、他と遜色ない、一人の人間として取り扱ってくれた。
実際、顔とやや姿勢が崩れているだけで、それ以外はさほど『悪い』所はないと自負する私だ。
だから、鏡を見るといつも思うのだ。
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